囃子堂

囃子堂 東京公演 アンコール! 【演目解説】と 上演形態の説明 【この公演は終了しました】

能楽には様々な上演形態があります。囃子堂(はやしどう)では能楽の音楽性にスポットを当て、囃子の魅力をご紹介します。

上演形態の説明

 

素囃子(すばやし)

能に挿入される、舞や働などを囃子のみで演奏します。純粋に「音楽として聴く能」をお楽しみください。

 

舞囃子(まいばやし)

能のクライマックス部分を装束を着けずに上演します。シテの舞う型にも囃子と同様にノリやコミがあります。舞(型)の中にある音楽性にもご注目ください。

 

一調(いっちょう)

一調は謡一人と囃子のいずれかの打楽器の一人が一対一で演奏します。短いながらも能を一番観た場合と同じ満足感(密度)が得られるような演奏が必要と云われ、通常の演奏とは異なり複雑で華やかな手(リズムパターン)を打ちます。謡と囃子が対峙する緊迫感あふれる演奏形態です。

 

演目解説

水波之伝(すいはのでん)

まず最初の曲は、謡の無い神舞のみの演奏です。普段の神舞とは違い、舞の途中に緩急をつけ、終盤では笛の調子を高くして演奏します。
これは、「水波之伝」という能『養老』固有の特殊演出によるものです。神舞を舞うのは養老の瀧(岐阜県)に現れた山神ですが、実はこの山神は、楊柳観音が衆生済度の方便として仮の姿となって現れたもの。楊柳観音と山神とではその姿は違っていますが本質は同じで、それはたとえば水と波とが本来同じものであるのと同様だということが「水波之伝」で強調されるのです。

 

忠度(ただのり)

平家の武将、平忠度は優れた歌人でもありました。勅撰集に自身の歌が撰ばれながらも、朝敵となったため「詠人知らず」として載せられたことを大いに心残りとしながら合戦に赴きます。
一ノ谷の合戦で岡部六弥太に討たれた忠度が霊となって現れ、合戦の様子を再現するのが舞囃子部分の骨格となりますが、
行き暮れて 木の下蔭を 宿とせば
花や今宵の 主ならまし
という歌が終盤に据えられ展開します。合戦の場面を描きながらも、修羅道(地獄)に落ち救済を願うという結末とせず、桜花の歌を基調とし、歌人の最期として締めくくる、独特の余情を残す曲です。

 

鶴(つる)

景色に見とれ、歌を詠みあぐねていた山部赤人は、鶴の声を聴き、名歌「和歌浦に~」を詠みます。人々は感嘆し、鶴は舞を舞います。やがて鶴は羽を打ち飛翔し消えてゆくのでした。流麗典雅な「鶴之舞」はこの曲のみに使われる特殊な舞です。
鶴の声、羽の音、飛翔する群鶴。真っ白く優美な鶴のイメージを描き出します。

↓ 一調の三曲は、秋の風情に満ちた曲をご覧いただきます。

駒之段(こまのだん)

能『小督』の一節です。高倉院の宣旨を受け、中秋の嵯峨野へ馬を走らせる源仲国は、ただ片折り戸のみをたよりに、小督局を探し訪ねます。駒の足音、澄み渡る空、名月、琴の音。情緒ゆたかに秋の夜を奏でます。

 

三井寺 クセ(みいでら)

行方知れずとなった我が子を探し、三井寺へやって来た狂女は鐘の音に誘われ鐘を打ち、鐘の故事を語り、古歌、古詩を詠じます。鐘の音と月が織りなす秋の夜気。しっとりとした名曲です。

 

松虫(まつむし)

還らぬ友を独りまつ男の霊は、深く結ばれた友への思いを語り、酒に戯れ舞を舞います。やがて夜は明け、ただ虫の声だけが残るのでした。「色々の色音の中に」様々な虫の声が響き合い、心淋しさを際立てます。

 

邯鄲 盤渉(かんたん ばんしき)

人生に迷う青年・盧生が、一睡すれば悟りを開くことができるという邯鄲の枕にて体験する不思議な世界。
思いがけず帝王の位を譲り受けた盧生は、金銀を散りばめた壮大な宮殿、居並ぶ諸侯、傅く美女達を眼前にわが世の春を謳歌します。その栄華は五十年にも及びましたが、突然全ての景色は虚空に吸い込まれるように消え失せます。全ては邯鄲の枕によって見た盧生の夢だったのです。夢が覚め、盧生はこの世の歓楽とは虚しいものなのだと悟るのでした。
舞囃子では、夢の中で帝王となり有頂天の盧生が舞う「楽(がく)」を中心に、夢が覚めるまでを演じます。本日は通常より笛の音の調子が高い「盤渉楽(ばんしきがく)」にて、緩急のついた浮き立つ調子をお楽しみください。

熊坂(くまさか)

大盗賊の熊坂は、財宝を運ぶ大商人・吉次信高の一行を襲撃しますが、その中に実は牛若丸も同行しており…。
牛若丸の獅子奮迅の働きに、次々と討たれる盗賊達。満を持して対決する熊坂は、得意の長刀を携え秘術を尽くして挑みますが、ついには力尽き命を落とします。
熊坂と牛若丸の戦いを敗者熊坂の視点から描きます。舞台上は熊坂一人ですが、まるでその場に牛若丸も存在するかのように感じることができます。勇壮で緊迫感のある戦いが、敗者の寂寥をより際立てる曲です。

 

獅子(しし)

文殊菩薩に仕える霊獣獅子が、咲き誇る牡丹の花に遊び戯れる曲です。
霊獣の出現を予感させる豪壮な序奏から始まり、一転、深山幽谷の静寂を感じる神秘の時間が訪れます。あらためて静寂を破る囃子が始まり、獅子が踊り出、舞い戯れる「獅子舞」となります。エネルギーの象徴でもある獅子の勢いを表すべく豪壮華麗に演奏します。能『石橋』、『望月』、『内外詣』に用いられます。

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